米国高配当ETFで、人気の高い「SPYD」、「HDV」、「VYM」。
投資に関心がある方であれば、購入を検討している、またはすでに保有している人も多いと思います。
分配金利回りもよく、手数料も低水準であることから、大変人気の商品です。
ただし、米国高配当ETFには「二重課税問題」があります。
手元にくる分配金には、米国現地での所得税と、国内での課税と、二重で課税がかかっています。
「二重課税問題」は、確定申告をすることで、全額ではないにせよ取り戻すことが可能です。
今回は、米国高配当ETFを購入にあたり、知っておかなければならない「二重課税問題」、また「外国税額控除」について解説します。
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目次
二重課税問題とは?
投資の利益には、約20%の税金が課税されます。
しかし、米国高配当ETFの分配金は、まず米国の所得税が10%課税され、そのあとに約20%の課税がされます。
結果、二重に課税されることで、米国高配当ETFは、約30%の課税がされることになります。
この、国内課税に加え、米国での課税が二重にかかることを「二重課税問題」といいます。
ちなみに、米国で課税されるのは、売却益は対象外で、配当金・分配金の利益が対象です。
二重課税調整制度とは?
この問題に対応するため、2020年1月1日より、「二重課税調整制度」が開始されています。
米国での所得税を二重課税として生じないように、米国所得税10%分の控除が受けられる制度です。
この制度の利用は、特別な手続きは不要で、自動的に米国所得税分の控除がかかります。
この制度は投資家にとって、大変朗報だったわけです。
この制度を利用すれば確定申告せずに、「二重課税問題」を解消し、分配金を受け取ることができます。
ただし、「二重課税調整制度」を利用できる、投資商品は限られます。
今回、取り上げている米国ETFの、「SPYD」、「HDV」、「VYM」は、この制度の対象外になります。
よって、米国所得税分の取り戻しをするには、今なお、確定申告が必要です。
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外国税額控除とは?
投資に限らず、外国に納税した所得税分を控除できる制度です。
確定申告をおこなうことで、「二重課税問題」を解消することが可能です。
ただし、「外国税額控除」には、控除上限額が設定されており、外国の所得税分が全額控除されるとは限りません。
あくまで最大で、全額の控除は受けられますが、年間所得によっては、一部の控除額になることもあります。
「SPYD」、「HDV」、「VYM」の場合、この「外国税額控除」を利用し、分配金を取り戻す必要があります。
「外国税額控除」を利用するには、繰り返しですが、確定申告が必要となります。
なお、NISA口座は「外国税額控除」の対象外になります。
外国税額控除の上限額
「外国税額控除」の上限額は、以下の計算式で算出します。
・所得税額×(年間分配金÷年間所得)
例えば、”年間所得”が800万円、”所得税額”は160万円の人が、”分配金”を年間で10万円受け取った場合、
160 ×(10 ÷ 800)= 2
つまり、「外国税額控除」の上限額は、2万円となります。
もし、控除しきれなかった分がある場合は、翌年以降3年間の繰越しが可能です。
申告分離課税と総合課税
さて、米国高配当ETFの分配金を取り戻すために、確定申告をおこなう必要があることは、説明したとおりです。
確定申告では「外国税額控除」を受ける際、課税方法を選択する必要があります。
「申告分離課税」か、「総合課税」かを選択します。
どちらを選択すればよいか?
年間所得からの課税所得額に応じて、判断することになります。
課税所得額が、695万円超であれば「申告分離課税」、年間695万円以下であれば「総合課税」がよいとされます。
ここでは説明が多岐に広がるので、所得税に焦点に当ててざっくりと解説します。
まず「申告分離課税」と、「総合課税」の税率は以下になります。
・申告分離課税
一律20.315%
・総合課税
年収により可変します。所得により以下のような、税率となります。
課税所得額による所得税率(=総合課税率)
330万超 695万以下 20%
695万超 900万以下 23%
900万超 1,800万以下 33%
「申告分離課税」は一律20.315%の課税なので、比較するとボーダーは課税所得額695万円になります。
つまり、課税所得額が695万超の方は、「申告分離課税」を選択するのがよいとなります。
課税所得額が695万以下の方は、「総合課税」を選択するのがよいとなります。
課税所得額は、源泉徴収に記載されています。
確定申告に必要な書類
・国税局HPからダウンロードできる「外国税額控除に関する明細書」
・証券会社が発行する「年間取引報告書」、「支払い通知書」
「外国税額控除に関する明細書」は、国税局のHPからフォーマットをダウンロードし、自分で作成します。
記入する箇所は、記入例をもとに、年間取引報告書や支払い通知書を見ながら記入します。
入力項目は多くなく、慣れればさほど難しいものではありません。
↓ NISA口座についてはコチラで解説しています
まとめ
- 米国高配当ETFの分配金は、二重課税になっています。
- 米国所得税分の10%は、全額ではないにせよ、確定申告をすることで取り戻すことができます。
- 二重課税調整制度とは、二重課税問題を解消するため2020年1月より開始になっている制度です。
- しかし、「SPYD」「HDV」「VYM」は、二重課税調整制度の対象外です。
- よって、外国税額控除を利用し、確定申告をすることで米国所得税分を取り戻す必要があります。
- 確定申告の際、申告分離課税と、総合課税のどちらかを選択します。
- 課税所得が、695万円超なら、申告分離課税、695万円以下なら総合課税が有利になります。
- 確定申告で提出する「外国税額控除に関する明細書」は、記入例をみながら、慣れれば簡単に書けるものです。
一度、書き方がわかれば、次年度も同様にさほど難しくなく、記入できると思います。
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